共謀罪を語る(2)
神林広恵さん(フリーライター)
1995年6月13日、神林さんは岡留安則(おかどめ・やすのり)『噂の眞相』編集長と一緒に、東京地方検察庁特別捜査部(特捜部)から名誉毀損で起訴された。『噂の眞相』が掲載した西川りゅうじん氏(マーケティングコンサルタント)と和久峻三(わく・しゅんぞう)氏(作家)に関する記事が、「公然事実を摘示して名誉を毀損した」(「起訴状」より)とされたのである。
『噂の女』では、この刑事裁判についても詳しく書かれている。
《メディアの最大の役割は権力に対するチェック機能だ。だが、その機能を全うした『噂の眞相』は権力によって潰されようとしている》
《検察側は初公判以来、一貫して「『噂の眞相』の記事の内容は虚偽(ウソ)であり、その嘘だという証拠を立証していく」と主張していた。にもかかわらず、この日の公判で突如として方針を百八十度大転換、「『噂の眞相』記事のどこがどう嘘なのかを証明するつもりはない、今後とも立証は一切行わない」と宣言。〈中略〉これでは批判された当事者が「気に入らない」「頭にきた」という感情だけで告訴し、検察が恣意的に捜査を開始すれば、どのメディアにも刑法の名誉毀損罪が成立してしまうことになる》
《裁判も佳境に入ったこんな時期に裁判長が交代するのか。これまでの証言を何も聞いていない裁判長が判決を書くの?〈中略〉茶番劇だと思った。裁判なんかで物事の真実なんて明らかになるはずがない》
そして、2002年3月20日、東京地方裁判所(木口信之裁判長)は岡留編集長に懲役8月(執行猶予2年)、神林さんに懲役5月(同)の有罪判決を言い渡す。
《内容は「一部でも私生活の行状(プライバシー)を書けば、記事全体が名誉毀損に該当する」「執筆者自身が直接見聞したり経験したこと以外は信用できない」というジャーナリズムや報道にとってはとうてい受け入れがたい判決だった》
しかし、東京地裁判決は、東京高等裁判所(山田利夫裁判長)でも最高裁判所(福田博裁判長)でも、覆ることはなかった。
神林さんは『噂の女』の「プロローグ」で、こう書いている。
《「巨悪を眠らせない」「正義の味方」「権力の腐敗を断罪する捜査機関」――。世間で、こんなもてはやされ方をしている東京地検特捜部はインチキだった》
もし共謀罪が成立したら、それに基づき、捜査するのは、このインチキたちなのだ。
―――本当にやせたよね。
神林さん でしょ、でしょ。『噂の眞相』の最後のころより、8kgもやせたの。
―――どうして、あんなに太ってたの?
神林さん 裁判が続いていたから、ストレス。暴飲暴食してたから。一時期、円形脱毛症にもなったでしょ。
―――『噂の女』は今年春から書いていたんだよね。あのころは、まだ太っていたような……。
神林さん そう。写真(著者近影)撮られるって聞いたから、まじめにスポーツクラブへ通って……。ちょっと、今日はダイエットの話なの!
―――いやいや。神林さんが共謀罪に関連して、ぜひとも言いたいことがあるというからさ。
神林さん 岡留と私が名誉毀損で起訴されたとき、検察は「編集会議で共謀し……」とか言っていたんだよ。寺澤さんも知ってると思うけど、『噂の眞相』に「編集会議」なんてないじゃん。数人しか(編集部員が)いないんだから。警察や検察はなんでもかんでも、すぐ「共謀した」って言うんだよ。
―――岡留さんとの共謀をでっち上げられたってわけか。
神林さん そうだよ。だから、共謀罪なんかできたら、週刊誌編集部まるごと100人ぐらい逮捕されちゃうんじゃない。しかも、私たちのときは記事が出てからだったけど、今度は記事が出る前に「共謀していた」って、捕まるんでしょ。コトの是非を世に問うこともできないじゃん。最悪。
―――まったく、そのとおりだなあ。記事が出てから捕まるなら、まだ納得できるけど。
神林さん 共謀罪ができて、最初に捕まるのは、NHKとか朝日(新聞)とか『週刊文春』にしてもらいたい。私たちが名誉毀損で起訴されたときも、全然、他人事。同じようなことやってるくせに。大手マスコミも、市民もそうだけど、自分たちが当事者になるまで騒がない。
―――総選挙で自民党が圧勝して、マスコミも市民もほとんど文句言わないまま、共謀罪も成立しちゃうのか。
神林さん 無力感っていうかさあ。これまで大衆批判って、タブーだったじゃない。でも、今回、自民党に(票を)入れた人間たちは批判したほうがいい。それと、左翼も左翼ばかりで集まってないで、そういう保守化した人間たちと論争して、共謀罪の危険さをわからせなきゃダメだよ。
―――ところで、『噂の眞相』の復刊はありえるの?
神林さん わからない。岡留は「1割ぐらいの可能性」と言っているけど。いちどやめちゃうと、またはじめるのは大変なのよねえ。仮に復刊するとしても、前と同じメンバーじゃやらないんじゃないかな。みんな、ほかの仕事してるし。
―――じゃあ、神林さんが何かおもしろいことやってよ。
神林さん まず、私は自分の処女作を売らないとさ。そういうわけで、みなさん、『噂の女』を買ってください!
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