身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ(13)
初成果
2001年7月に、警視庁機動隊の旅費の不正経理について実名で告発した後、私は、警視庁での18年間の「裏ガネ人生」を単行本にすべく、執筆を始めていた。
これは、警察が、日常業務として犯罪行為を行っていることを、歴史に形として残しておくことで、私が生きた証にするという作業であり、私にとって、最も大切なものだった。
2002年の年明け、書き終えた原稿を読んで、編集者は「捨て身の蛮勇」と、校閲者は「自爆テロ」と評した。
そして、ハードカバーの『警視庁裏ガネ担当』(講談社)は、4月18日に店頭に並ぶことが決まった。
私は、著書のほぼ半分を割いて、警視庁機動隊の旅費の不正経理を告発するとともに、この不正を可能にしている、法や規則のインチキも指摘していた。
機動隊員がバス(公用車)で移動し、その中で泊まっても、1人1人に日当と宿泊費が支給される「旅費法」。機動隊員であれば、内勤日や休日でも「日額旅費」なるものが支給される「警察庁旅費取扱規則」。これらに守られて、機動隊旅費の不正経理は、綿々と続けられてきたという事実を強調した。
ところが、著書の発売直前になって、想定外の出来事が起きた。3月7日、警察庁が、突然、「警察庁旅費取扱規則」の一部改正を発表したのである。施行は2002年4月1日。機動隊員の近距離の移動では、日当が支給されなくなり、「日額旅費」は廃止された。
警察庁は、私の著書が出版される前に、規則の不備だけは直しておかなければと考えたのだ、と私は発表を聞いて思った。事実、原稿が固まった1月に、私は編集者からこんなことを言われていた。
「(講談)社の総務に、うちを管轄する大塚警察署から、『大内さんの原稿を、本の発売の前に、1日でも早く読ませてくれ』って連絡があったらしい。僕らからすると、おもしろくないけど、管理部門は警察との関係も重要だから、渡すことにした。了解してほしい」
警察庁は警視庁を使い、警視庁は所轄署を使って、私の告発内容を知り、「適切に」対応したということだ。
規則改正の記者発表で、警察庁は、得意気に、こんなことを言っている。
「この改正は、昨今の機動隊の勤務環境などから見て、実情に、ややそぐわなくなった部分に関するものだ。この改正で、機動隊旅費の予算は、年間20億円の削減になる」
警察庁とすれば、予算を削減できたと強調したいのだろうが、私から見れば、過去数十年間、この20億円は、そのまま裏ガネになっていたのだ。
さらに、警視庁だけで計算すると、年間12億円の機動隊旅費予算のうち、この規則改正で削減されるのは、たったの2億円だ。残りの10億円は、今までどおり、裏ガネになる。
しかし、いずれにしても、私の1年間の告発の結果、国費を、年間20億円歳出削減させた。
そう考えるのは自画自賛かもしれないが、それまでの告発の不発を考えれば、一歩前進は間違いない。
私は、このときは自分を誉めることにした。
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