身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ(8)
出るか引くか
2001年4月に、機動隊員に支給されるべき旅費が、全部裏ガネとなって、警視庁警備第1課にプールされといると、匿名で告発して以来、私には、さまざまなことが起きた。
「上司に『おまえ、大内と連絡取り合ってるようだが』と、それとなく注意されたよ。おまえの携帯、発信記録取られてるぞ。もう、携帯からおれに電話しないでくれ」
と、昔の同僚から電話があった。
「最近どう? 就職活動、うまくいってる? 一度、本部の『人材情報センター』(警務部に属し、幹部の天下り先など、最就職先の発掘やあっせんをする部署)に行ってみれば? 『ぜひ相談にのりたい』って言ってたよ」
これも、昔の同僚からの電話。
「悪いけど、もう、店に来ないでください。あなたが出入りしていると、警視庁の人たちが来られないらしいんです」
これは、仲間とよく行ったスナックのママからの電話。
これらのことで、私はかなりヘコみ、現実に、就職活動がうまくいっていなかったこともあって、「人材情報センター」に出向くことを、真剣に考えた。
「一連の私の告発で、少なくとも機動隊員には、旅費の存在が明らかになった。組織も、今までどおりの搾取はできまい。そろそろ私が消えても、所期の目的は達成できたと考えよう」
と、自分を納得させようと試みた。
しかし、私には、どうしても許せないことがあった。『フライデー』の取材に対し、警視庁も警察庁も、
「旅費は適正に執行している」(警視庁広報課)
「裏ガネが警察庁に上納されているという事実はない」(警察庁広報室)
と、まるで真剣味のない回答を繰り返したのだ。
それでも百歩譲って、密かに内部で自浄の動きがあれば、まだいい。しかし現実には、相変わらず隊員には何も知らされず、さらに、ある機動隊では隊長が隊員を集め、
「今聞こえてくる、機動隊に関する雑音には耳を傾けずに、職務にまい進するように」
と訓示したこともわかった。
「匿名での告発は無駄なことだった。このまま中途半端で終わらせるわけにはいかない」
私は、身を捨てて、実名で討って出る決意を固めた。
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