上に厚く、下に薄く
愛知県警察本部総務部総務課の裏帳簿によると、毎月、「月額旅費」という10万円から20万円の支出がある(当時、大卒初任給は5万円前後)。
落合博実(おちあい・ひろみつ)元朝日新聞編集委員が内部告発者から説明されたところでは、これはヤミ手当で、総務課長が1万円から1万5000円、同次長が8000円から1万円、同係長が3000円から3500円、末端職員でも1500円から2000円が支給されていたという。
「『上に厚く、下に薄く』というのは、裏ガネ配分の基本です。しかも、全員が裏ガネの恩恵に浴することにより、共犯意識を植えつけ、内部告発者が出ないよう工夫しています。これは全国の警察でも行われている手口です」(落合元編集委員)
総務部長の裏帳簿を見ると、毎月、「総務部長調整手当」として3万円が支払われている。さらに、総務部の裏帳簿には、年数回、総務部長へ「特別手当」が3万円ずつ、総務部員らへ「激励金」がそれぞれ10万円以上、支出されたという記載がある。
「公安職」の警察官は、「行政職」の一般公務員より俸給が高く、各種手当も充実している。それに加えて、けっこうな金額がヤミ手当として支給されるのだから、罪悪感にさいなまれなければ、大変いい商売である。
総務課、総務部長、総務部、いずれの裏帳簿でも、人事異動時などに餞別が支出されている。相手方と金額は、部外者(名古屋地方検察庁検事、名古屋陸運局長〈当時・現在、中部運輸局長〉、愛知県議会議員、愛知県警記者クラブ加盟社記者など)が3000円から5000円、愛知県警本部長が3万円、総務部長が5万円、総務部会計課長が7万円、それ以外の総務部各課長が2万円から3万円、総務部員が3000円から2万円、総務部以外の警察官や職員が3000円から1万円となっている。あきれたことに、本人が異動するわけではない、警察幹部夫人にも3000円から1万円の餞別が支払われている。
「口止め料」込みとみられる会計課長に対する餞別は破格としても、身内へ手厚いことはよくわかる。おそらく、刑事部や警備部、交通部などでも同様のことが行われているだろう。
〈漆間巌警察庁長官が「捜査費」で宴会を開いていた!〉〈吉田正弘元愛知県警本部長は「捜査費」で宴会を認める〉〈「捜査費」で宴会は年間1億円以上!〉で報道してきたとおり、正規予算も飲み食いに使ってしまうのが警察である。裏帳簿ともなれば、小は「牛乳代40円」から大は10万円を超える宴会まで、飲食費は枚挙にいとまがない。
しばしば警察庁から愛知県警へ出向いた警察官も接待されている。『予算事務提要』(大蔵財務協会)によれば、交際費は「儀礼的、社交的な意味で部外者に対し支出する一方的、贈与的な性質を有する経費」と定義される。警察官同士の飲み食いが交際費から支出できないのは明らかだから、警察庁警察官らも裏ガネで接待されていることは了解していたはずである。
一方、愛知県警記者クラブ加盟社記者らに対する接待も、年数回、行われている。裏ガネから餞別をもらったり、接待されたりと、「記者クラブは、公権力の行使を監視するとともに、公的機関に真の情報公開を求めていく重要な役割を担っています」(2002年1月17日付「記者クラブに関する日本新聞協会編集委員会の見解」より)などとはとてもいえない癒着ぶりだ。しかも、ある記者が毎年、年賀状印刷代を裏ガネから負担させていたとなると、まさに「マスゴミ」と呼ぶのがふさわしい所業である。
裏帳簿から支出される冠婚葬祭費用も「上に厚く、下に薄く」だ。
「香典」は、末端職員の身内(以下、「身内」は略す)なら1000円、中堅幹部なら2000円、所属長(愛知県警本部の課長や署長)以上なら3000円、一部所属長以上や本部長なら5000円となっている。
また、「結婚祝儀」は、末端職員本人なら2000円から5000円、所属長以上の息子や娘なら5000円から1万円、「本部長令嬢」には、「22,000円」と「33,000円」が支払われている。
こうして裏ガネで弔われたり、祝福されたりして、はたして成仏できるのか、幸せになれるのかと疑問を持てば、警察官やその家族は務まらないのかもしれない。
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