身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ(15)
道警追及Ⅰ
2000年に警視庁退職、2001年に警視庁の不正経理を実名告発、2002年には告発本の出版。私のそんな個人年表も、2003年の欄は、何も記されずに過ぎていった。
しかし、その年の晩秋、北海道警が突然世間の注目を集めることとなった。旭川中央署の捜査報償費の支出書類が流出したのだ。情報公開請求しても、「捜査上の秘密」を理由に、まったく開示されない極秘書類だ。2003年11月23日、テレビ朝日系『ザ・スクープスペシャル』で、その書類が丹念に検証された。
キャスターの鳥越俊太郎氏が、流出した領収書から、捜査協力謝礼を受け取ったとされる人たちを、一人ひとり取材して回る映像は、まさに圧巻だった。
「警察に協力したことはない。まして謝礼など受け取るはずがない。筆跡も全然違う」
と憤慨する本人。
「この領収書の住所と名前は、確かにうちのおじいさんですが、領収日として書かれている年月日には、もう亡くなっていました」
と当惑気に語る家族。
警察が、架空の捜査協力者の領収書を自分たちで作ることによって、捜査報償費を使ったことにしたうえ、浮いた現金を組織で不正にプールするという、全国警察共通の手口が、まざまざと浮かび上がった。そして、翌日の新聞各紙は、一面や社会面で、この問題を大きく取り上げた。
この番組に、私もインタビュー出演した。10月初旬、番組スタッフに、流出した書類を見せられたのが、私がこの「事件」にかかわる第一歩だった。
署長や副署長の決裁印の印影まで鮮明なコピーの束。
「この書類は、匿名で番組宛に送られてきました。どう攻めればいいですかねえ」
スタッフに聞かれた私は、即座に答えた。
「領収書に書かれている人たちに、謝礼をもらったか聞けばいいんです。おもしろいことになりますよ。1999年には、警視庁の銃器対策課で、同じ書類が流出して、問題になっていますから、それも参考になるでしょう」
番組で私は、警察官が実際に偽造領収書を書くときの「ひな型」の存在、警察の裏ガネづくりの基本が「マネーロンダリング」であること、そして、不正経理をきちんと事件にしたら、警察官のほとんどが逮捕されてしまうほどの共犯構造などを語った。
番組放映後、私に、各地から問い合わせやコメント依頼があった。市民オンブズマンによる、各県警への全国一斉情報公開請求などで発覚し、くすぶり続けていた不正経理疑惑が、一気に火を噴いたかのようだった。
しかし、道警そのものの反応は冷ややかだった。
「出所不明の書類など、見る必要もない。原本は、すでに保存期間が過ぎて廃棄されているから、突き合わせもできない」
道議会で、流出書類の確認を求められた芦刈勝治本部長(当時)は、こう言い放った。高橋はるみ道知事も、そのときは、追及の姿勢をまったく見せなかった。
世論は、いったん静まり始めた。しかし、この問題はこれだけでは終わらず、翌2004年には、私も、雪の北海道を何度も訪れることになる。
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