身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ(18)
道警追及Ⅳ
2004年3月4日、私は、再び札幌を訪れた。この日の午後、元釧路方面本部長の原田宏二氏が、道議会の総務委員会で、参考人として裏ガネ証言をすることになっていたからだ。地元のテレビ局に傍聴席を確保してもらい、私は最前列に座った。
平日の昼間ということで、傍聴席は、年配の人が多かったが、熱気に溢れていた。私が話を聞けた何人かが共通して言うのは、「お役人さん、もう、いいかげんにしてくれ」ということだった。確かに、北海道では、90年代半ばから、道庁の裏ガネづくり(最終的に、約71億円が「不正支出」とされた)、道警警部による、やらせ捜査や覚せい剤所持事件など、「官」のデタラメが相次いで発覚しており、道民の怒りも、最高潮に達していたのだろう。
また、この日の参考人質疑はメディアも注目しており、NHKが異例の全道生中継、民放各社も特別報道番組を組むなど、まさに全道民の視線に晒されることとなった。
午後1時、原田氏は、代理人の市川守弘弁護士とともに、議場である第1委員会室に入り、着席した。後ろの席には、かつての同僚や部下である道警幹部が、苦虫を噛みつぶしたような表情で座っている。
原田氏は、まず、かつての部下だった元刑事から届いた手紙を披露した。
「これを書いた元捜査員は、現職当時、『捜査費をきちんと捜査に回せば、検挙率はもっと上がる』と上司に進言しましたが、すぐに道警本部に呼ばれて注意を受け、その後左遷されたあげく、早期退職しました」
そして原田氏は、語気を強めた。
「これが、現場の声なき声なんです」
私が氏を直接見るのは、初めてだったが、私はこのとき思った。
(この人は、警察官僚ではなく、現場の本当の親分なのだ)
その後質疑となり、原田氏は、裏ガネにまつわる自らの経験を淡々と語ったが、氏は、
「(自分の証言を裏付ける)データを持っている」
と発言した。議会は提出を求めたが、氏は、内容が個人情報であるとの理由で、提出を控えた。
また、原田氏は、裏ガネが、道議会の議員対策(接待など)にも使われたと発言し、議場を一瞬凍りつかせた。
委員会終了後、私は、いくつかのメディアにコメントを出した。その中でも触れているが、私が、当日、最も強く感じたのは、こんなことだった。
(原田さんが、今日一番言いたかったのは、自分の後ろにいた、道警の佐々木友善総務部長〈当時〉に、「君もすべて知っているのだから、僕に昔の話なんかさせずに、君が、現在でも裏ガネはあると認めろ」ということだろう)
後日、原田氏が持っている「データ」は、氏の接待記録であり、警察庁や関係団体をもてなした日付や相手の氏名が書かれており、回数は500回を超えるということが判明する。
現在では、私は、原田氏と酒席をともにするほど親しくさせていただいているが、私が何度、「データを公開してください」と言っても、応じてくれない。
ただ、「百条委員会ができればなあ」と、悔しそうに言う。
百条委員会とは、地方自治法第100条に規定されていることから、俗に言われる名称だ。要するに、国会における証人喚問と似て、偽証罪も適用される厳しいものだが、証言内容は、一定条件下で、公務員としての守秘義務を免除されるというものだ。
道議会では、野党が、この百条委員会の開催を何度も求めたが、与党の反対で、未だに実現していない。与党は、警察庁や道警と同様、ある程度の謝罪と処分で、完全幕引きとしたいのだ。
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