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三宅勝久さん(ジャーナリスト) »

2005年12月22日 (木)

身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ(19)
道警追及Ⅴ

 2003年に発覚した、道警の裏ガネ問題が、現在に至るまで、追及され続けているのは、もちろん、北海道新聞の粘り強い報道によるところが大きいが、「人」と「物」が、次々に現れたという点も見逃せない。

 まず、「人」である。道警の幹部OBでありながら、実名で内部告発した、原田宏二氏、齋藤邦雄氏、「不正はないがカネは返す」という不可解な行動をとった、元旭川中央署長の島満広氏、舞良昭宏氏については、既報のとおりだが、さらに、2004年3月には、北見方面本部で、捜査費の支出書類に、架空の領収書が添付されていたことが判明。当時、同本部の警備課長だった畠山伸一警視が、書類の偽造と隠蔽工作を認めるという事案が発生した。

 概要はこうだ。

 2003年6月、来たるべき会計検査院による検査に先立ち、警察庁による事前検査が、北見方面本部に入った。悪名高き「内部監査」である。

 このとき警察庁は、2002年度の国費捜査費の支出書類のうち、3件を問題ありとした。スナックの「3,200円」「3,300円」の領収書、ソバ屋の「5,500円」の領収書だ。金額が、スナックにしては安過ぎ、ソバ屋にしては高過ぎるというわけだ。

 これらの領収書は、もちろん偽造に違いない。内部監査が、本当の監査なら、このような領収書があったら、支出自体を疑わなければならないのに、警察庁は、「問題あり」としただけで帰ってしまった。つまり、内部監査は、

「不自然な書類は、本番(会計検査院による検査)までに差し替えておけよ」

 という、暗黙の指示なのだ。

 畠山警視は、この指示を受け、問題の3枚の領収書を、手持ちのパブの領収書3枚に差し替えた。白紙領収書に、それぞれ、日付と金額を、そのまま転記したのである。パブなら、安過ぎず、高すぎず、と考えたのだろう。

 私から見れば、この作業は、よくあることだ。捜査費の支出書類は、100%インチキだから、綻びが起きる可能性は、ゼロにしておかなければならない。

 しかし、7月に行われた本番の検査で、とんでもないことが起こった。検査員が、

「このパブは、北見市の住宅地図に載っていない」

 と言い出し、後日でいいから、店の存在を証明する資料を提出せよと指示したのだ。

 実は、畠山警視が手持ちにしていた領収書のパブは、検査当時には存在していなかった。そこで畠山警視は、会計検査院に提出する資料を作るために、さらなる工作に出る。店舗を記入した観光地図、店の求人広告、従業員の名刺、これらを偽造し、会計検査院に提出したのだ。

 しかし、この工作は、結局会計検査院の知るところとなった。検査院は、

「警察との信頼関係が著しく損なわれるものであり、遺憾極まりない」

 とコメントし、さらに、その年の秋に内閣に提出された検査報告の中で、

「虚偽の情報を提供し、組織的に説明責任を回避した」

 と、道警を批判した。

 畠山警視による一連の工作は、どこの警察でも行われているものだ。私が勤務した、いくつかの警察署でも、署内には、管内の協力者がくれた、いわゆる白紙領収書がゴロゴロしていた。

 このような領収書は、非常に便利なものだが、使い方を誤ると、抗弁ができない事態になる。私の経験でも、同一の喫茶店の白紙領収書を使って、刑事課は内税で、交通課は外税で金額を記載したために、内部監査で差し替えを命じられたことがある。

 北見方面本部では、この後も、さらなる偽造領収書が発覚し、組織的な責任が追及され始めたため、道警は、またトカゲの尻尾切りをする。2005年5月30日、会計検査院の検査を妨害したとして、偽計業務妨害容疑で、畠山警視を書類送検したのだ。

 各地の裏ガネ問題で、立件されたのはこれが初めてであり、警察が、自浄の方向に変わってきていると見る論調もあるが、とんでもない。この事案を、個人の犯罪にしたいだけである。

 札幌地検による捜査結果は、つい先ごろ発表されたが、その内容については、あらためて検証してみたい。

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