身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ(20)
道警追及Ⅵ
道警が、北見方面本部の不正経理を立件する4か月前の、2005年1月14日、民主党の鉢呂吉雄、佐々木秀典両衆議院議員は、一連の道警の不正経理に関して、7名の道警現職警察官を、東京地検に刑事告発した。
2000年度から2001年度にかけて、道内の警察署長として勤務し、副署長らと共謀して公金を横領したとして、中塚幸男総務部長(告発当時・以下同じ)、高橋道夫総務課長、五十嵐敏明生活安全部長、角森正人函館方面本部長、片貝忠男釧路方面本部長の計5名が、業務上横領容疑。
2002年度に、北見方面本部警備課長として、スナックの領収書を偽造して公金を横領したとして、和田徹道警本部地域企画課調査官が、有印私文書偽造・同行使と業務上横領容疑。
2003年度に、北見方面本部警備課長として、パブの偽造領収書を会計検査院に提出したとして、畠山伸一道警本部警務部付が、有印私文書偽造・同行使と偽計業務妨害容疑。
これらの告発は、道警が、畠山氏1人の首を差し出した書類送検と比べ、格段に踏み込まれたものだ。
東京地検から告発状を移送された札幌地検は、道警からの畠山氏の送検と併せて捜査したが、動きは鈍く、結果は、その年の12月12日まで待たねばならなかった。
会見での地検の第一声は、その場にいた記者たちも、あ然としたという。
「今日はペーパー(資料)の配付はありません。録音もしないでください」
捜査結果も、予想されたこととはいえ、誰もが納得できないものだった。
署長経験者5名と、和田氏の「業務上横領」は嫌疑不十分で不起訴。理由は、
「捜査用報償費を裏ガネ化した事実はあったものの、捜査に必要な経費として使用し、私的流用は認められなかった」
真に「捜査に必要な経費」として使用するなら、正規な予算を使えばいいのであり、裏ガネ化する意味がない。論理は破綻している。
和田氏の「有印私文書偽造・同行使」も、嫌疑不十分で不起訴。理由は、
「偽造されたとされるスナックの領収書が破棄され、確証が得られない」
この偽造は、そもそも、北見方面本部に会計検査に入った、警察庁の検査員が発見したものであり、証言がとれるだろうし、検査に立ち会った、当時の畠山警備課長も、偽造の事実を認めている。地検は、どんな捜査をしたというのか。
畠山氏の「有印私文書偽造・同行使、偽計業務妨害」も嫌疑不十分で不起訴。理由は、
「会計検査院に、業務を妨害されたという被害感情がなく、白紙領収書を出したパブの店主は、偽造領収書の作成を了解していた」
会計検査院が、この事件に関して出した「警察との信頼感計が著しく損なわれるものであり、遺憾極まりない」「(道警は)虚偽の情報を提供し、組織的に説明責任を回避した」というコメントに、被害感情がないというのか。
また、万が一、会計検査院が、地検の事情聴取で、被害感情がないと答えたのだとしたら、この事案を業務妨害と感じない会計検査院に、もはや存在する理由はない。
パブの店主が、すべて了解していたという理論付けも甘い。誰が、好き好んで、他人に白紙領収書を預けるというのか。領収書は「売上」の記録であり、税務上もきちんとした管理が求められるものなのだ。ただ、店は警察に弱い。「白紙領収書頼むよ」と言われて、断れる業者は、なかなかいないのだ。この点を、地検はまったく考慮していない。
結局、送検・告発事案については、地検、道警、会計検査院が、弱い業者を巻き込んで、事が大きくならないようにまとめたということだが、実は、ここからがおもしろい。
地検が、送検も告発もない罪名を1つ作り上げたのだ。畠山氏による有印虚偽公文書作成・同行使だ。店主が了解していた、パブの領収書偽造は罪にならないが、その領収書を添付して、支出書類を作ることは、公文書の偽造というわけだ。そして地検は、この事案だけを起訴猶予処分とした。
起訴猶予とは、嫌疑はあるが、諸般の事情で起訴を見送るというもので、本件も「私利私欲に基づいた犯行ではない」とされ、いわば情状が酌量された。
この地検独自の立件は、どう見ても、地検の自画自賛と、世論かわしのための演出だ。地検としては、「独自立件」を強調したいだろうが、そうはいかない。
7名9件にもわたる送検・告発に対し、すべてが「嫌疑不十分」では、世論が納得するはずがない。しかし、良くも悪くも、警察裏ガネ問題の先駆となる今回の刑事処分で、起訴という事態は避けたい。そんなことから、地検は、最初から起訴猶予にできそうな事案を探していたのだ。
地検の捜査によると、署長経験者5名についても「裏ガネ化はしたが私的流用はない」のだから、嫌疑はあるが情状酌量である起訴猶予となって当然なのだが、大幹部に「嫌疑あり」とは言えない。そこで、畠山氏について、送検・告発になかった事案を作り、「公文書を偽造したが、私利私欲ではない」と、当初から予定していた起訴猶予処分を下したのだ。
私から見れば、署長経験者5名と畠山氏の事案はまったく同一の犯意であり、処分に違いが出るのは理解できない。地検は、すべてを丸くおさめるために、矛盾だらけの理論武装をしたということだ。そして、そのことが恥ずかしく、ペーパーレス、録音なしの会見となった。
会見で、石田一宏次席検事は、
「犯罪と認めるに足る十分な証拠がなかった」
と述べたが、単に証拠を集める気がなかっただけのことだ。
結局、地検が犯罪と認めたのは、偽造領収書を添付した支出書類を作る行為だけだ。裏ガネを使う者は助かり、作る者は犯罪者にされるという、悲しい構図がここにもある。
道警は、この刑事処分と、道や国へのカネの返済で、完全幕引きを図っている。しかし、まだまだ追及の材料はある。さまざまな「ブツ」も出てきているのだ。
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