« 警察の裏ガネづくりの証拠が消えている | トップページ | 第2次記者クラブ訴訟(1)
「記者席も判決要旨も便宜供与」と東京地裁 »

2006年1月19日 (木)

身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ(21)
道警追及Ⅶ

 元北海道警弟子屈署次長、齋藤邦雄氏は、裏ガネの金庫番だった自らの経験を克明に述べているが、それだけではなく、氏は、手持ちの裏ガネ資料を、すべてさらけ出した。

 自分のところに集まった裏ガネが、その後、幹部のヤミ手当として、また、部内の飲食費として、その他正規の予算としては使えない、さまざまな用途に使われたことを示す、いわゆる裏帳簿は、かなり話題になったが、実は、齋藤氏が公表した裏ガネ資料の中には、会計実務を18年やった私も初めて見る、不可思議な書類もあった。

「捜査費設定書」(黒塗りは本ブログによる・以下、設定書)

 この書類こそ、捜査費の支出がすべてインチキであり、しかも、この不正経理が道警本部主導で行われていることを白日の下に晒す、決定的証拠なのである。

 おさらいしておくが、捜査費は、表向きには、捜査員が現金を持って協力者と会い、その際情報提供謝礼を渡して、領収書をもらうという形で支出される。そのことを踏まえたうえで、この書類を検証してみよう。

 この設定書は、年度ごと、署内の課ごとに作成されており、平成12年度のものが最も新しい。記載されているのは、捜査員名、債主(「債権者」の意。ここでは協力者のこと)の氏名と住所、領収書記録者名、謝礼の交付場所、基準月額、謝礼の交付月日と金額、そして、一番上には、所属名を記載する欄がある。

 つまり、1枚の紙で、この年度、どの捜査員が、いつ、誰に、いくら謝礼を交付したかが一目でわかる仕組みの、一覧表になっている。

 この表は、一般的に言えば、チェックに便利なものだ。会計検査の前に、普通に行う自己チェックの際、捜査員が謝礼を交付した日付に誤りがないかどうかを、「出勤簿」「休暇簿」「旅行命令簿」などと照合して、確認する必要があり、その作業を、捜査費の支出書類を、いちいちめくっていくことなく、1枚の紙で行える。その意味では、「検査の準備のためのメモ」という理屈が、一見たちそうではある。

 しかし、そんな言い訳は、実は通用しない。設定書には、前述したとおり、「領収書記録者名」なる欄が設けられているからだ。この欄は、誰がどう見ても異様だ。別の欄に「協力者の氏名」があるのだから、領収書記録者は、当然その人のはずであり、「領収書記録者」などという欄は必要ない。

 つまり、協力者が書くはずの領収書は、実は警察内部で作られているという証拠であり、設定書の真の意味のひとつは、この協力者名義の領収書は、この署員が書くという、備忘録なのである。同一人物なのに、筆跡が異なっては困るからだ。

「設定書などという書類は、弟子屈署独自のものであり、そこでは領収書の偽造があるかもしれないが、他の署はきちんとやっている」という理屈も成立しない。これも前述のとおり、設定書の右上に、所属名(署の名称)を記載する欄があるからだ。弟子屈署だけの書類なら、こんな欄は必要ない。

 道警は、「こんな書類は道警では使用していない」と言っていたが、それも通用しない。釧路方面本部長が、管下各所属長に宛てた、こんな文書が出てきたからだ。平成12年10月12日付である。

「国費会計事務に係る実地監査の実施について(通知)」

 道警本部の会計課員による、各所属に対する監査の実施を通知したものだ。この文書の中に、各所属が監査で提出する書類の一覧が示されているが、その最後に、「捜査費設定書」と、きちんと書かれている。

 繰り返すが、設定書は、そこに記載されている内容から明らかなように、チェックを簡単に行うためのメモではない。謝礼を渡したことになっている捜査員と、その領収書を書いた署員はきちんと別人になっているか、協力者ごとに、領収書を書く専任の署員がいるかなど、不正隠蔽のためのものだ。

 設定書を、道警の内部監査で見るということは、言い方は変だが、「きちんと不正経理を行っているか」を、道警本部がチェックしているということだ。つまり、捜査費のインチキは、道警本部の指導のもと、捜査費を使うすべての所属で行われているのである。

「捜査費設定書」と「国費会計事務に係る実地監査の実施について(通知)」。これらの書類で、道警は抜き差しならぬ事態になるはずだが、そうはなっていない。会計書類のわかりにくさで、追及する側がピンときていないことと、道警が、これらの書類を「出所不明」としているからだ。

 いっとき、『北海道新聞』(道新)が、この書類を検証していたが、続かなかった。そして今では、道新そのものが、警察に足元をすくわれる事態になってしまった。

|

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/133720/8213113

この記事へのトラックバック一覧です: 身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ(21)
道警追及Ⅶ
: