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デモ規制を強める警察 »

2006年8月 3日 (木)

吠える内部告発者たち(2)
愛媛県警・仙波敏郎巡査部長

Senba  今、ある意味もっとも有名な現職警察官と言えるだろう、愛媛県警鉄道警察隊に勤務する仙波敏郎巡査部長(57歳・写真)が、2006年7月28日、かながわ県民活動サポートセンター(神奈川県横浜市)で行われた、「警察見張番」(「かながわ市民オンブズマン」の警察担当部門)総会で講演した。

 演題は「私はなぜ告発を選んだか? 人事委員会による配転取り消しまでの1年5カ月」。

 仙波氏は、2005年1月20日、突然弁護士を伴って、実名顔出しで記者会見し、愛媛県警の裏ガネづくりを証言した。

 仙波氏は、巡査部長に昇任後、初めて偽造領収書の作成を求められたとき、「これは犯罪やないですか!」と断ると、当時の上司から、「きみは組織の敵か?」「組織にはカネが必要だ」と言われたことなどを、会見で詳細に語った。

 仙波氏は、偽造領収書の作成を拒否し続け、ある年、警部補昇任試験後、当時の上司に言われた言葉も暴露した。

「きみは試験には通らんよ。領収書を書いていないから」

 仙波氏は、そのときから昇任をあきらめ、

「犯罪を取り締まる警察官が、犯罪に手を染めるわけにはいかない」

 という信念のもとに仕事を続け、ついに告発会見に及んだという。 

 県警は、会見4日後の1月24日、仙波氏に、通信指令室への異動を内示したが、転勤日は示さなかった。さらに、「自殺のおそれがある」との理由で、氏から拳銃を取り上げた。

 そして、3日後の同月27日、仙波氏は、正式に異動の辞令を交付された。記者に「報復人事では?」と追及された県警幹部は、「本人の実績、経歴などを考慮して適材適所に配置している。報復人事ではない」と、堂々と答えた。

 しかし、真相はまったく違う。仙波氏は、この日の講演で、次のように語った。

「転勤先の私のポストは、新設(通信指令室企画主任)ですよ。私のためだけに設けられたところです。仕事は何もありません。毎日窓から松山城を眺めています」

 これこそ、まさに報復だ。県警は、仙波氏の姿を全職員に見せつけ、「つまらないことをすると、こうなるぞ」と恫喝したのだ。

 しかし、仙波氏はひるまなかった。転勤直後の2005年2月、「異動は、内部告発に対する報復人事だ」として、県の人事委員会に不服申し立てを行ったのだ。同時に、県に対して損害賠償を求める訴訟も起こした。

 仙波氏は、こう語る。

「世間では、私のことを『正義の人』『サムライ』などと言いますが、決してそんなことはありません。私は警察官です。偽造領収書を書くなどという犯罪行為を拒否するのは、あたりまえじゃないですか。でも、現実にはそれが通じない。このままでは、警察は、そして日本は腐っていきます。私は闘います。間違ったことはしていない」

 通信指令室がある、県警本部の庁舎内では、実際堂々と振舞っているのは仙波氏だけだったという。

「食堂に行くと、みんながシーンとなります。私がエレベータに乗っているのがわかると、乗ろうとしていた人たちは皆やめます。(県警)本部長も、廊下で私と出くわすと、わざわざ迂回して通ります」

 おそらく仙波氏は、他の人の態度を見るたびに、自分が正しいということを再認識していたのだろう。

 その思いが報われるときが、ついに来た。2006年6月7日、愛媛県人事委員会は、「仙波氏の配転は、違法・不当な処分であり、これを取り消す」という、裁決を公表した。

 裁決では、こう言っている(抜粋)。

「配転後にポストが新設されるなど、配転は恣意的で、県警の言う『行政目的上の必要性』も認め難い。配転は告発会見との間に強い関連性があり、告発内容に問題があって、何らかの処分が行われたならともかく、それはまったく問題にされていない」

 仙波氏の任命権とそれに対する責任を、県警本部長ではなく、直属の上司である県警本部生活安全部地域課長に転嫁させたという、人事委員会の限界はあるにせよ、仙波氏の実質完全勝利と言っていいだろう。

 このときの喜びを、仙波氏はこう語った。

「愛媛は狭いですから、私も顔と名前を知られていたんですね。元の職場への復帰が決まると、街で会った多くの県民の方々が、『仙波さん、おめでとう』って声をかけてくれたんです。本当にうれしかった」

 仙波氏は、講演をこう結んだ。

「現職警察官が内部告発をするということは、1人ではできません。私も、サポートの態勢を整えていただいたからこそ、ここまでやれました。『(仙波さんを)支える会』の代表世話人である東玲冶君(仙波氏の高校の同級生)、弁護団、マスコミの方々には、本当に感謝しています。私の勝利が、今各地で起きている、裏ガネ訴訟や不当な懲戒処分問題の前進につながることを期待します」

 筆者が、警察の不正経理を告発して5年。警察を取り巻く環境は、信じられないほど変わった。現場警察官が、皆我慢するだけという時代は過ぎ去ったのだ。その事実を、警察幹部は、いまだに甘く見ている。そろそろ、「出直し」を真剣に模索すべきではないのか。

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