警察庁自身がわからない長時間駐車取り締まりの根拠
駐車違反には、道路交通法で禁止されたものと車庫法(自動車の保管場所の確保等に関する法律)で禁止されたものがある。このうち前者に関する取り締まりが、2006年6月1日から「民間」へ委託された。
とはいえ、純粋な「民間」ではなく、交通安全協会や警備会社という警察の天下り法人ばかりが受託し、その利益優先の理不尽な取り締まりは、国民から強い反発を招きつつある。警察庁は「取り締まり件数(2005年・159万3377件)を2倍へ増やす」と公言している。
将来、車庫法で禁止された駐車違反、すなわち「長時間駐車違反」(20万円以下の罰金)に関しても、警察の天下り法人が取り締まることが予想される。ただし、長時間駐車を禁止する車庫法第11条第2項(下掲)は、はなはだ不可解だ。
何人も、次の各号に掲げる行為は、してはならい。
1 自動車が道路上の同一の場所に引き続き12時間以上駐車することとなるような行為
2 自動車が夜間(日没時から日出時までの時間をいう。)に道路上の同一の場所に引き続き8時間以上駐車することとなるような行為
長時間駐車が、昼間12時間以上、夜間8時間以上と定義された理由は何なのか。特段、区別する必要も感じられないし、「この法律は、(中略)道路交通の円滑化を図ることを目的とする」(車庫法第1条)というのであれば、むしろ昼間の長時間駐車のほうが、より短い時間で取り締まられるべきだ。
しばしば、警察は、ほとんど交通量がない道路で長時間駐車を取り締まる。しかも、昼間ではなく、深夜や未明に行う。「ノルマ達成のための取り締まり」と国民からすこぶる評判が悪い。ちなみに、常々、警察庁も「目標管理(ノルマ)はある」と認めている。
このような取り締まりを前提とすれば、長時間駐車が、昼間より夜間のほうが短い時間で定義づけられているのもうなずける。取り締まりの効率がよくなるからである。
いずれにしても、警察庁が大義名分としている理由が知りたくて、法律書や実務書、車庫法制定(1962年)当時の国会の会議録などを調べた。しかし、長時間駐車が、昼間12時間以上、夜間8時間以上と定義された理由は、どこにも記載されていない。
警察庁で質問すると、井上卓彦交通局交通規制課環境対策第2係長(車庫法担当)は、「私が前任者から引きついだ解説書にもない」と困惑していた。
そこで、筆者は、2006年7月31日付で警察庁に「自動車の保管場所の確保等に関する法律第11条第2項で定める禁止事項につき、12時間以上駐車することおよび夜間8時間以上駐車することが禁止事項とされた根拠がわかる文書」を情報公開請求した。
情報公開法は、「開示決定等は、開示請求があった日から30日以内にしなければならない」(第10条第1項)と規定する。その期限の最終日・2006年8月30日付で警察庁から「行政文書不開示決定通知書」が郵送されてきた。
「警察庁においては、請求に係る文書を保有していないため、不存在につき不開示とした」
つまり、警察庁自身も、長時間駐車が、昼間12時間以上、夜間8時間以上と定義された理由がわからないというのである。
にわかには信じがたく、井上係長へ電話し、「どの範囲の調査を行い、『文書不存在』と決定したのですか」と尋ねると、「答える必要はありません」と言われた。
あまりの不誠実さに驚きながら、「『文書不存在』というのが事実だとして、長時間駐車が、昼間12時間以上、夜間8時間以上と定義された理由について、あなたは口頭で説明できますか」と尋ねると、井上係長は「(警察庁)広報室経由で質問してください」と言った。
筆者が「国民から同様な問い合わせがあっても、あなたは『広報室経由で質問してください』と対応するのですか」と尋ねると、井上係長は「仮定の質問には答えられません」と言った。
「小役人」と話してもラチがあかないので、筆者は広報室へ電話をかけなおした。しかし、そこでも、「小役人」がしのごの言うばかりで、結局、回答は得られなかった。
従前、警察庁は駐車違反取り締まりを「カネのなる木」と考えてきた。
駐車場が著しく足りないにもかかわらず、ほぼ100%近い道路を駐車禁止とすれば、街中、取り締まり対象車両だらけとなる。このような状況をつくりだしたうえで、警察の天下り法人が独占的にレッカー移動やパーキング・メーター管理を行ってきた。そして、いよいよ駐車違反取り締まり自体もはじめたわけである。
警察庁にしてみれば、長時間駐車が、いかなる理由で定義づけられたかなど、どうでもいいことなのだ。
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