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2007年7月 4日 (水)

武富士の「恫喝・疲弊訴訟」を手助けする東京地裁(2)

 消費者金融大手・武富士(東京都新宿区)と武井保雄前同社会長(2006年8月10日に病死)は、「恫喝・疲弊訴訟」を筆者へしかけたうえ、同社ホームページで筆者を「ブラックジャーナリスト」などと誹謗中傷した。これに対し、筆者は「不当訴訟」と「名誉毀損」であるとして、武富士と武井前会長へ損害賠償2億2000万円と謝罪広告を請求する訴訟を東京地方裁判所に提起した〔既報〈武富士の「恫喝・疲弊訴訟」を手助けする東京地裁(1)〉参照〕。

 2007年6月26日、東京地裁民事第45部(白石哲裁判長、吉村美夏子裁判官、佐野文規裁判官)は判決を言い渡した。そのなかで不当訴訟と名誉毀損はハッキリ認められた。

「(武富士と武井前会長は)事実的・法律的根拠がないにもかかわらず、専ら自らに対する原告からの批判的言論を抑圧する意図で、本件名誉棄損訴訟を提起したものと認めるのが相当である。本件名誉棄損訴訟の提起は、裁判制度の趣旨・目的に照らして著しく相当性を欠くものと解されることから、本件名誉棄損訴訟は不当訴訟に該当し、その訴えの提起は、原告に対する不法行為を構成するというべきである」

「(武富士ホームページの)各記事は、原告の社会的評価を低下させるものであって、名誉棄損に該当することから、これらの記事の本件ホームページ上への掲載は、原告に対する不法行為を構成するものである」

 しかし、問題はこれからだ。不当訴訟と名誉毀損に対する代償が、武富士や武井前会長の資力にかんがみれば、ないに等しい。東京地裁は、「不当訴訟と名誉毀損の責任が問われても、この程度のものですから、次回からも安心して、それらを行ってください」とお墨つきを与えている。その理屈を見てみよう。

「原告は、上記各行為(不当訴訟と名誉毀損)によって、相当程度精神的苦痛を被ったことは優に推認されるところである」と判決は言う。ただし、それらが行われた時点で、慰謝料いくら相当か、謝罪広告が必要かについて、判決は述べていない。

「その後の原告側及び被告ら側の対応」として、判決は、こう列挙する。

「平成16年3月10日付けで、被告武富士は、原告の名誉を傷つけたことは誠に遺憾である旨の『謹告』を(同社ホームページで)公表している」

「同日付けで、亡武井は、(武富士)ホームページ上に『謝罪』と題して、原告に関するいわれのない誹謗中傷記事をホームページ上に掲示することを了承したこと、この了承は被告武富士及び亡武井の(ジャーナリスト・山岡俊介氏に対する)盗聴事件への関与を隠蔽する目的で殊更に行ったものであること、二度とこのような違法な行為を行わないことを述べている」

「亡武井が、(武富士)ホームページ記事が、原告の名誉を棄損するものであることを認め、原告に対して1000万円の弁済の提供をし、これを供託している」

「朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、赤旗の新聞各紙において、本件名誉棄損訴訟(武富士が筆者へ損害賠償2億円と謝罪広告を請求していた訴訟・以下同)が、被告武富士による請求放棄により終結したことが報じられるとともに、当該訴訟に対する原告自身のコメントも掲載されている」

「『週刊プレイボーイ』平成16年3月2日号に、原告が本件名誉棄損訴訟の終了後、改めて本件に関する記事を掲載している」

「『FLASH』平成16年3月30日号では、『武富士と警察の癒着を暴いた男』として、本件の原告に関する記事が掲載されている」

 これらが考慮され、筆者が武富士と武井前会長を提訴した時点で、「慰謝料の額としては、500万円を以て相当と認める」「謝罪広告の掲載を命じることは相当ではない」と判決は言う。

 結局、「亡武井からは、原告に対し、本件に関して1000万円の弁済の提供がなされ、これが供託されていることからすれば、原告に発生した損害賠償請求権は、消滅したものと解するのが相当である」とされた。つまり、東京地裁は「武井前会長が供託している1000万円を東京法務局へ取りに行けばよい」と言っているわけだ。ちなみに、武富士と武井前会長は「原告の損害が1000万円を上回ることはない」という争い方をしている。

 武富士が「謹告」、武井前会長が「謝罪」と題する文書を公表し、後者が1000万円を供託したのも、両者が電気通信事業法違反(山岡氏に対する盗聴)の罪で起訴されていたという事情がある(同法は、個人だけではなく、法人も処罰する)。「謹告」「謝罪」「供託書」は情状酌量を求める証拠として、法廷へ提出された。

 こういう工作が功を奏し、検事が冒頭陳述で、「窃盗、銃刀法違反などの前科10犯があり、強姦未遂の前歴もある(被害女性と示談が成立し、告訴が取り下げられたため、起訴できなかったと思われる)」と犯罪性向を指摘していた武井前会長は、辛くも実刑判決を免れた。

 もし、武富士や武井前会長が本心から反省していれば、刑事裁判終了後、筆者が謝罪広告を要求しても、応じるはずだ。両者は、刑事裁判進行中、山岡氏らジャーナリストの要求で、複数の謝罪広告を掲載している。

 本訴訟が東京地裁で審理されているとき、筆者は白石裁判長らに、「裁判所が武富士の不当訴訟に利用されている現状がおかしい。実効性がある再発防止策を判決に盛り込んでほしい」と訴えた。しかし、判決を見る限り、東京地裁は無自覚で「利用されている」というより、意識して「手助けしている」という印象だ。

 筆者は白石裁判長らに、「武富士は、記事が事実か否かは関係なく、裁判の勝ち負けも関係なく、フリーランスをつぶす目的だけで高額名誉毀損訴訟(恫喝・疲弊訴訟)を提起している。これが許されるならば、フリーランスが、事実か否かは関係なく、武富士をつぶす目的だけで記事を書くことも許されるはずだ」とも言った。

 現在、控訴も含めて、対応を熟考中である。

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