2006年3月18日 (土)

警察庁記者クラブ事件(速報4)
最高裁判所も筆者の仮処分命令申し立てを棄却

 筆者が「警察庁と同記者クラブは、寺澤有が警察庁長官に対する取材を行う目的で、警察庁の会議室・記者室に出入りすることを妨害してはならない」という仮処分命令を求め、特別抗告していた事件につき〔既報〈警察庁記者クラブ事件(速報2)東京高裁も筆者の仮処分命令申し立てを棄却〉参照〕、2006年3月13日、最高裁判所第1小法廷(泉德治裁判長)は、これを棄却する決定を出した。

 決定は、

《裁判官全員(泉裁判長、横尾和子裁判官、甲斐中辰夫裁判官、島田仁郎裁判官、才口千晴裁判官)一致の意見》

 として、

《主文 本件抗告を棄却する。抗告費用は抗告人(筆者)の負担とする》

《理由 民事事件について特別抗告をすることが許されるのは、民訴法336条1項所定の場合に限られるところ、本件抗告理由は、違憲をいうが、その実質は原決定の単なる法令違反を主張するものであって、同項に規定する事由に該当しない》

 とした。

 つまり、警察庁長官が警察庁記者クラブ加盟社記者らだけに対し、記者会見を行い、そこから筆者が排除されても、日本国憲法第14条(法の下の平等)や同第21条(取材・報道の自由、知る権利)に違反しないというのである。

 いつもながら「非常識の壁」を感じさせられる判断だが、いつまでも国民がそのような状態を許しておくとは思えない。

 本件は、仮処分命令は認められなかったものの、正式な民事訴訟で争えば、筆者が勝つ可能性も相当あると考える。近々、「第3次記者クラブ訴訟」として提訴するつもりだ。

 もっとも、韓国では同様の仮処分命令が認められ、記者クラブが廃止されていること〔既報〈警察庁記者クラブ事件(14)韓国で記者クラブが廃止されたいきさつ〉参照〕を思えば、なんとも歯がゆい。

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2006年3月 1日 (水)

警察庁記者クラブ事件(15)
公人は取材拒否できない

 債務者・国は、「答弁書」および「準備書面」で、「警察庁長官が取材に応諾する義務はない」と主張してきた。

 これに対し、債権者・筆者は、「陳述書」で、「債権者らが、社会通念上、妥当な方法で取材する限り、公人たる警察庁長官には、応諾義務がある。『妥当な方法』の典型的なものは、記者会見やブリーフィング、懇談などへ出席し、質問することだ。仮に、国が主張するように、『警察庁長官が取材に応諾する義務はない』としても、それは、記者会見やブリーフィング、懇談などへ、債権者らが出席すること自体を拒否できるものではなく、債権者らの質問に対し、『ノーコメント』と言えるにとどまる」と反論してきた。

 上記問題について、『「マス・メディアと法」入門』(松井茂記著・弘文堂刊)では、以下のような解説がなされている。

 アメリカの事例では、市長が、ある記者の書いた記事が無責任で不正確で偏向していたとして取材拒否を命じた事例がある。市長は他の記者であれば受けつけると主張したが、新聞社はこれを拒否し裁判所の救済を求め、裁判所は市長に対し他の記者と同様に取材を許すよう命じたのである(Borrecav. Fasi, 369 F. Supp. 906(D. Hawaii 1974))。わが国での事例としては、日刊新愛媛取材拒否事件がある。これは、愛媛県の地方紙日刊新愛媛が、県立高校増設に絡んで県が地方財政法に反して市に負担金の分担を求めていた事実を報道したところ、県知事が今後一切の情報提供を中止し、一切の取材に応じないと通知してきた事例である。県は、取材の自由は消極的自由であり、新聞記者の会見の申込みに応じるかどうかは個人の自由であると主張し、さらに取材拒否の理由として、日刊新愛媛が実は特定企業の宣伝機関紙としての性格を色濃く持っており、対立する者に対する誹謗中傷に満ちており、公正な報道とはいえず、社会的公器としての新聞とはいえないことを挙げている。しかし、私人が取材に応じるかどうかは個人の自由であるが、県あるいは県知事が県知事の立場として取材に応じるかどうかは、全く県および県知事の自由と考えるべきではなく、正当な理由なく一切取材に応じないとか、特定マス・メディアに対してのみ差別的に取材を拒否することは許されないというべきである。本件の場合、取材拒否が同紙の報道内容によることは明白であり、政府に批判的なマス・メディアに取材を拒否した典型的事例と考えられ、県の取材拒否は表現の自由に反するものではないかと思われる。

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2006年1月11日 (水)

警察庁記者クラブ事件(速報3)
最高裁判所へ「特別抗告理由書」を提出

 従前、筆者=債権者は、国(警察庁)と警察庁記者クラブ、同幹事社3社(産業経済新聞社〈産経新聞〉、テレビ朝日、日本経済新聞社)=債務者に対し、「債務者らは、東京都千代田区霞が関2丁目1番2号所在の警察庁庁舎内において、債権者が、警察庁長官との懇談に使用する会議室・記者室に出入りして取材することを妨害してはならない」という仮処分命令を申し立てていた。

 しかし、これが東京地方裁判所民事第9部(青木晋裁判長)と東京高等裁判所第5民事部(根本眞裁判長)で棄却されたことは、〈警察庁記者クラブ事件(速報1)「公人の取材応諾は便宜供与」と東京地裁が認定〉〈警察庁記者クラブ事件(速報2)東京高裁も筆者の仮処分命令申し立てを棄却〉でお伝えした。

 2005年12月20日、筆者は最高裁判所に特別抗告し、昨日(2006年1月10日)、「特別抗告理由書」も提出した。

 全文後掲する「特別抗告理由書」を読んでいただければわかるが、戦後60年以上が経ちながら、いまだに「大本営発表」をたれ流しているマスコミとその大きな原因である「記者クラブ」制度について、「これが新憲法(日本国憲法)が保障する『取材・報道の自由』なのか」と、真正面から最高裁に問いかけているのだ。

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2005年12月31日 (土)

警察庁記者クラブ事件(14)
韓国で記者クラブが廃止されたいきさつ

 近年まで韓国にも記者クラブが存在した。もともと日本が占領時代、持ち込んだものだ。

 戦後、韓国政府は情報とメディアをコントールするため、積極的に記者クラブを利用した。メディアも様々な便宜が受けられる記者クラブに依存するばかりであった。

 そこに批判される者と批判する者との対峙などなく、両者とも共存共栄で談合がくり返された。ひいては国民の「知る権利」が侵害され、税金の使途から見ても、特定メディアだけが便宜を受けることは問題があった。

 1990年代以降、インターネットが普及し、市民が主体的に情報をやりとりするようになると、記者クラブが「百害あって一利なし」と認識されてきた。正確な情報を伝達するうえで、記者クラブは障害でしかなかった。

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2005年12月19日 (月)

警察庁記者クラブ事件(速報2)
東京高裁も筆者の仮処分命令申し立てを棄却

hosoreport  2005年12月13日、東京高等裁判所第5民事部(根本眞裁判長)は、筆者が「警察庁と同記者クラブは、寺澤有が警察庁長官に対する取材を行う目的で、警察庁の会議室・記者室に出入りすることを妨害してはならない」という仮処分命令を求め、抗告していた事件につき〔既報〈警察庁記者クラブ事件(速報1)「公人の取材応諾は便宜供与」と東京地裁が認定〉参照〕、棄却する決定を出した(全文後掲)。

 決定で根本裁判長らは「抗告人(筆者)の抗告理由を十分しんしゃくし(た)」というが、審尋は1回も開かれず、結論も、

「抗告人が会議室・記者室で開かれる本件懇談会(警察庁長官の記者会見)等の取材機会に出席する権利を有するとは認め難いから、報道・取材の自由の侵害を被保全権利とする抗告人の主張は、その前提において失当というほかない」

「本件懇談会の対象者を(仮処分命令申し立ての)相手方記者クラブに所属する記者らに限定することが著しく不合理であると認めることも困難であり、結局、平等権侵害を被保全権利とする抗告人の主張も理由がない」

 と従来の裁判所の見解をくり返すのみで、何ら目新しさはなかった。

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2005年11月13日 (日)

警察庁記者クラブ事件(13)
警察庁記者クラブは「警察庁の広報活動の一環」

「記者室」問題が持ち出されたことにより、舩川輝樹『週刊現代』副編集長と筆者が東京地方裁判所民事第9部に申し立てている仮処分命令の趣旨が、以下のとおり補正された。債権者は舩川副編集長と筆者、債務者は国(警察庁)と警察庁記者クラブ、同幹事社3社(産業経済新聞社〈産経新聞〉、テレビ朝日、日本経済新聞社=仮処分命令申し立て当時)である。

(旧)「債務者らは、東京都千代田区霞が関2丁目1番2号所在の警察庁庁舎内において実施される記者会見、ブリーフィング、懇談その他の取材機会に債権者らが出席し質問することを妨害してはならない」

(新)「債務者らは、東京都千代田区霞が関2丁目1番2号所在の警察庁庁舎内において、債権者らが、警察庁長官との懇談に使用する会議室・記者室に出入りして取材することを妨害してはならない」

 それまで、「記者室」問題を避けるため、「取材機会」と表現していたものが「会議室・記者室」と補正され、特定の場所へ出入りすることを「妨害してはならない」と要求する内容になった。このほうが、警察庁と同記者クラブが何を妨害しているのかわかりやすいし、両者が共謀している実態も説明しやすい。

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2005年11月11日 (金)

警察庁記者クラブ事件(12)
醍醐聰東京大学大学院経済学研究科教授の「意見書」

 醍醐聰(だいご・さとし)東京大学大学院経済学研究科教授が舩川輝樹『週刊現代』副編集長と筆者のため、『警察庁長官等への取材制限に関する意見書――記者クラブの性格・実態と関わらせて――』(2005年9月5日付)を作成してくれ、これは東京地方裁判所民事第9部へ証拠として提出された。

 記者クラブの歴史からその弊害、「記者室」問題に関する評価まで、極めて細かく論考されている。必読だ。

警察庁長官等への取材制限に関する意見書
――記者クラブの性格・実態と関わらせて――

醍醐聰

 私はメディア論を専攻する者ではないが、本年1月のNHK職員の内部告発で発覚したNHKのETV特番(2001年1月30日放送分)への政治介入問題に関心を持ち、真相の究明とNHKの番組制作における政治からの自立を求める市民運動を続けている。その過程でジャーナリズムの本源的役割が権力対峙性にあることを痛感し、そうした問題意識からNHKはもとより、国内の組織メディア、メディア関連団体、メディア論専攻の研究者、さらには外国特派員らと議論を重ねてきた。また、メディア論の文献も渉猟してきた。

 こうした私の経験を通じて得た知見にもとづいて、本件で提起された警察庁長官等への取材制限に関する見解を述べることにする。その際には、本件と深く関わる記者クラブの性格、役割に焦点を当てることにする。

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2005年11月10日 (木)

警察庁記者クラブ事件(11)
「記者室」問題

 2005年8月22日、第3回審尋が東京地方裁判所民事第9部で開かれた。舩川輝樹『週刊現代』副編集長と筆者が新たな主張を追加することとなり、代理人が佃克彦弁護士から堀敏明弁護士と山下幸夫弁護士へ交代した。

 今回から我々が持ち出したのが「記者室」問題だ。国(警察庁)は「準備書面」で、こう主張している。

《本件懇談会(警察庁長官の記者会見)について、出席者を債務者(警察庁)記者クラブ加盟社の常駐記者に限定することが不合理であるとはいえないし、警察庁長官の裁量判断の合理的限界を超えているともいえないことは明らかである》

「常駐」という言葉に注目してもらいたい。警察庁記者クラブ加盟社記者らが警察庁庁舎内に「常駐」しているからこそ、それらだけを対象として、警察庁長官が記者会見を開いても、不合理ではないというのだ。

 しかし、舩川輝樹『週刊現代』副編集長や筆者が警察庁や同記者クラブに対し、「我々も『記者室』に『常駐』したい。そうすれば、警察庁長官の記者会見にも出席できるから」と要求しても、認められる可能性はまったくない。全国津々浦々、役所という役所に存在する記者クラブは、独占的、排他的に無償で「記者室」を使用しているからである。

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2005年11月 9日 (水)

警察庁記者クラブ事件(速報1)
「公人の取材応諾は便宜供与」と東京地裁が認定

kaiken1  昨日(2005年11月8日)、東京地方裁判所民事第9部(青木晋裁判長)から、舩川輝樹『週刊現代』副編集長と筆者=債権者が、国(警察庁)と警察庁記者クラブ、同幹事社3社(産業経済新聞社〈産経新聞〉、テレビ朝日、日本経済新聞社)=債務者に対し、「債務者らは、東京都千代田区霞が関2丁目1番2号所在の警察庁庁舎内において、債権者らが、警察庁長官との懇談に使用する会議室・記者室に出入りして取材することを妨害してはならない」という仮処分命令を申し立てていたことに関する決定文書(2005年11月7日付・後掲)が手渡された。

《漆間〈巌警察庁〉長官は、定例の記者会見を行っていないが、原則として、毎週木曜日の午後、当日午前に開催される国家公安委員会の開催状況を説明するため、債務者記者クラブに所属する記者らと懇談する機会を設けており、〈中略〉債務者会社らが本件懇談会において漆間長官が発言した内容を報道する際、「(定例)記者会見」による旨の表現を用いることがあるが、これは一般読者及び視聴者に分かりやすく伝えるための便宜上の表現に過ぎない》

 としたうえで、

《本件懇談会は、国家公安委員会の開催状況等を迅速かつ正確に国民に伝えるため、便宜供与として行われているものであるから、本件懇談会を行うかどうか、その対象者を誰にするかなどについては、漆間長官の裁量に委ねられているというべきであって、債権者らが、警察庁庁舎内で開かれる本件懇談会等の取材機会に出席する権利を有するとは認め難い》(要旨)

 と判断し、青木裁判長らは「本件申立てをいずれも却下する」と決定した。

 明らかに「記者会見」であるものを「懇談会」とする事実認定や公人中の公人である漆間長官が取材に応諾することが「便宜供与」とする法律的な判断はまったく承服しがたい。同日午後、舩川副編集長と筆者、山下幸夫弁護士は、東京高等裁判所に抗告することを決め、司法記者クラブで記者会見した(写真・小川光撮影)。

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2005年11月 8日 (火)

警察庁記者クラブ事件(10)
警察庁記者クラブ幹事社3社は和解を拒否

 筆者は、1989年、大学在学中からフリーランスジャーナリストとして活動しはじめ、すでに15年以上が経つ。その間、新聞社やテレビ局、通信社の記者らと知り合い、情報交換することもたくさんあった。彼ら彼女らに、いちおう「同業者」という意識は持っている。

 だからこそ、第1回審尋(2005年7月26日)、第2回審尋(同年8月5日)が終わってから、警察庁記者クラブ幹事社3社(産業経済新聞社〈産経新聞〉、テレビ朝日、日本経済新聞社=当時)だけに和解を持ちかけた。

 その内容は極めてシンプルだ。幹事社3社が「警察庁で実施される記者会見、ブリーフィング、懇談その他の取材機会に債権者ら(舩川輝樹『週刊現代』副編集長と筆者)が出席し質問することを妨害しない」と約束するだけである〈後掲「和解条項(案)」参照〉。

 しかし、約10日後、幹事社3社から「和解には応じられない」という連絡が入った。正直、舩川副編集長と筆者は、驚き、あきれた。これが約束できないということは、「舩川と寺澤の取材は妨害する」と宣言しているようなものだ。

 我々は、警察庁記者クラブが「敵」とハッキリ認識できたので、これまで控えてきた主張を追加することとした。

和解条項(案)

一 債務者株式会社産業経済新聞社、同株式会社日本経済新聞社、及び同株式会社テレビ朝日は、2005(平成17)年6月及び7月期における警察庁記者クラブの幹事社として、債権者らに対し、下記の点を確認する。

 債務者らは、警察庁で実施される記者会見、ブリーフィング、懇談その他の取材機会に債権者らが出席し質問することを妨害しない。

二 債権者らは、債務者株式会社産業経済新聞社、同株式会社日本経済新聞社、及び同株式会社テレビ朝日に対する申立を取り下げる。

三 申立費用は各自の負担とする。

以上

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2005年11月 7日 (月)

警察庁記者クラブ事件(9)
河野義行さん(「松本サリン事件」被害者)の「陳述書」

 河野義行さん(「松本サリン事件」被害者・元長野県公安委員)が、舩川輝樹『週刊現代』副編集長と筆者のために、「陳述書」(2005年9月3日付)を作成してくれた。河野さんならではの体験に基づく「陳述書」は、東京地方裁判所民事第9部裁判官ら(青木晋裁判長、平田晃史裁判官、西野光子裁判官)も感じるところがあったはずだ。

 以下、ほぼ全文を掲載する。ちなみに、この「陳述書」に対する国(警察庁)、警察庁記者クラブ幹事社3社(産業経済新聞社〈産経新聞〉、テレビ朝日、日本経済新聞社=当時)からの反論はない。

陳述書

2005年9月3日

東京地方裁判所民事第9部御中

(住所略)
河野義行

 私は、「松本サリン事件」(1994年6月発生)の被害者でありながら、1年近くも犯人視された報道を続けられました。また、2002年7月から2005年7月まで、長野県公安委員も務めました。これらの経験および寺澤有氏から拝見させていただいた本件仮処分命令申し立ての記録に基づき、以下、陳述させていただきます。

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警察庁記者クラブ事件(8)
国の傲慢極まりない主張

 東京地方裁判所民事第9部における審尋で、国(警察庁)は、「取材・報道の自由」や国民の「知る権利」を真っ向から否定する主張を展開している。「答弁書」から引用してみよう(カッコ内は筆者が補足)。

《漆間(巌警察庁)長官に、債権者ら(舩川輝樹『週刊現代』副編集長と筆者)の本件インタビュー申入れに係る取材に応諾する法的義務がないこと、並びに、同長官及び警察庁に本件(記者会見)出席申入れに応諾する法的義務がないことは明らかである》

 舩川副編集長や筆者が、社会通念上、妥当な方法で取材する限り、公人中の公人である漆間長官には、応諾義務がある。そうでなければ、我々の「取材・報道の自由」と国民の「知る権利」が同時に侵害される。「妥当な方法」の典型的なものは、インタビューしたり、記者会見やブリーフィング、懇談などへ出席し、質問したりすることだ。

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警察庁記者クラブ事件(7)
どう考えても「懇談」ではなく「記者会見」

 警察庁記者クラブ幹事社3社(産業経済新聞社〈産経新聞〉、テレビ朝日、日本経済新聞社=当時)記者らは、東京地方裁判所民事第9部へ「陳述書」を提出し、彼らが言う「警察庁長官の懇談」とはどのようなものか、説明している。

 まず、大塚創造産業経済新聞社記者の「陳述書」を見てみよう。

《原則として毎週木曜日の午後、警察庁記者クラブ加盟社の記者と警察庁長官との間で、懇談がもたれています。
 原則として毎週木曜日の午前中には、庁内で国家公安委員会が開催されており、そこで話題になった事項の内容や背景について、本来は、各社が警察庁長官に対して個別に取材を行うことになるのですが、また、そのように取材したいところですが、全社の記者が各社ごとにこれを行うことが、時間的にも場所的にも現実的ではないため、便宜上まとまって取材をしているのです。私達は、この懇談は、各記者の個別取材の延長にあるものと考えています。ですから、この懇談のときには、カメラや録音は入りません。このことからしても、懇談は、一般的に理解されている記者会見とは異なるものです。
 この懇談は、記者の常駐する部屋とは離れた、庁内の別の部屋で行われます。室内には、大きなラウンドテープルがあり、正面に長官が座り、各社の記者がテーブルを囲むように座って、各記者が質疑を行うという形で行われています。
 このような懇談について、紙面では「会見では」と書く場合もありますが、これは、読者にわかりやすく伝えるための方便にすぎません。
 警察庁と私達警察庁記者クラブ加盟社の記者双方の認識として、この懇談への参加は、警察庁記者クラブ加盟社の記者を対象としています》

「語るに落ちる」とは、まさにこのことである。大塚記者がるる説明していることこそ、世間一般で「記者会見」といわれるものだ。「カメラや録音は入りません」などというのは、警察庁記者クラブが警察庁に遠慮しすぎて、というより報道機関としての使命を放棄して、「不遜な態度が撮影されたり、失言が録音されたりしたら、困る」という警察庁長官の公人にあるまじき身勝手さを許しているだけである。

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2005年11月 6日 (日)

警察庁記者クラブ事件(6)
警察庁長官は記者会見を開いていなかった!?

 2005年7月26日、第1回審尋が開かれた。東京地方裁判所民事第9部は合議体で審理することを決定し、青木晋裁判長、平田晃史裁判官、西野光子裁判官という布陣。

 当日までに、国(警察庁)と警察庁記者クラブ幹事社3社(産業経済新聞社〈産経新聞〉、テレビ朝日、日本経済新聞社=当時)の主張は書面で提出されていた。そのなかで、まず驚かされたのが、「警察庁長官は定例の記者会見を行っていない」というもの。「警察庁長官は警察庁記者クラブに所属する記者に対し、懇談する機会を設けている」そうだ。これは国と幹事社3社が異口同音に主張している。

「記者会見」と「懇談」で比べれば、前者のほうがより公式かつオープンな行事と考えられる。「記者会見」と称しながら、特定の記者だけしか出席できなかったり、特定の記者が排除されたりしていては、裁判所も「取材・報道の自由」との兼ね合いで、引っかかるものが出てくるであろう。

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2005年11月 4日 (金)

警察庁記者クラブ事件(5)
裁判官面接(第2回)

 2005年7月14日、東京地方裁判所民事第9部で、第2回裁判官面接が行われた。さっそく筆者は青木晋裁判官に問いかけた。

「ある外国特派員から『青木裁判官にきいてほしい』と頼まれたんですが、朝日新聞やNHKはどういう権利があり、警察庁長官の記者会見へ出席しているんですか」

 青木裁判官は微笑しながら、こう答えた。

「それは、代理人(佃克彦弁護士)にきいてください」

 筆者はハッとした。「空気」みたいなものが青木裁判官から伝わってきたからだ。

「朝日新聞やNHKにも警察庁長官の記者会見へ出席する権利(取材の自由)などないというのが、裁判所の考え方かもしれない」

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2005年11月 3日 (木)

警察庁記者クラブ事件(4)
被保全権利

 第1回裁判官面接(2005年7月12日)で、青木晋裁判官は「被保全権利についても検討してください」と言った。「被保全権利」というのは、仮処分命令が発せられることにより守られる債権者(舩川輝樹『週刊現代』副編集長と筆者)の権利である。

「また妙なことを言うなあ」と筆者は思った。舩川副編集長と筆者は、日本国憲法第21条で保障された「取材・報道の自由」という権利に基づき、仮処分命令を申し立てているはずだ。

 しかし、青木裁判官や佃克彦弁護士(債権者代理人)と話していて、だんだん事情が飲み込めてきた。日本の裁判所では、「取材・報道の自由」がそれほど重要な権利と認められていないのである。

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2005年9月21日 (水)

警察庁記者クラブ事件(3)
裁判官面接(第1回)

 2005年7月12日、舩川輝樹『週刊現代』副編集長と筆者、佃克彦弁護士は、東京地方裁判所民事第9部へ出頭した。民事第9部は、「民事保全法」に基づく仮差押えや仮処分、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(DV〈ドメスティックバイオレンス〉防止法)に基づく保護命令などを専門に扱うセクションで、「保全部」と呼ばれている。裁判官7名前後が大部屋で机を並べているのが特徴だ。

 我々は担当裁判官の机の前へ向かった。「青木裁判官」というネームプレートが机上に置かれていた。担当裁判官は立ち上がると、こう言った。

「本事件は『青木裁判官』が担当します」

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2005年9月11日 (日)

警察庁記者クラブ事件(2)
司法記者クラブで記者会見

 舩川輝樹『週刊現代』副編集長と筆者が、「債務者ら(国〈警察庁〉および警察庁記者クラブ、同加盟社15社)は、東京都千代田区霞が関2丁目1番2号所在の警察庁庁舎内において実施される記者会見、ブリーフィング、懇談その他の取材機会に債権者ら(舩川副編集長および筆者)が出席し質問することを妨害してはならない、との裁判を求める」という仮処分命令を東京地方裁判所民事第9部へ申し立てたのが2005年7月9日。

 同日は土曜日であったため、これに関する記者会見は、7月11日(月曜日)、東京地裁2階の司法記者クラブで行われた。出席者は、舩川副編集長、筆者と佃克彦弁護士。

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2005年9月10日 (土)

警察庁記者クラブ事件(1)
仮処分命令申し立て

 既報〈漆間巌警察庁長官が「捜査費」で宴会を開いていた!〉は、『週刊現代』(講談社)2005年7月23日号(2005年7月11日発売)が初出である。記事末尾で触れたとおり、漆間長官は筆者のインタビューを拒否した。

 そこで、舩川輝樹(ふなかわ・てるき)『週刊現代』副編集長と筆者は、漆間長官らが開いている記者会見やブリーフィング、懇談などへ出席し、質問することで、同長官の「『捜査費』で宴会」問題を追及しようとした。

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