初めて「RS-2000」が敗れた日
1992年、「RS-2000」(三菱電機)というオービス(速度違反自動監視装置)が登場した。当時から「自分が運転していたクルマの速度より測定値が大きい」と抗議するドライバーはあとを絶たない。裁判で無罪が争われた事件もたくさんある。
しかし、警察や検察はともかく、裁判所までもが、三菱電機が説明する「『RS-2000』は誤作動も誤測定もしない」という言葉をうのみにし、ドライバーがいくら真剣に無実を訴えても、きちんと聞いてこなかった。
筆者も、普通免許取得(1986年)から15年間、通算走行距離25万kmを無事故、無違反で過ごしてきたが、2000年10月1日、明らかに「RS-2000」が誤作動、誤測定したケースで検挙され、2001年11月30日、起訴された。現在、第1審判決待ちである〔既報〈「RS-2000」(三菱電機)裁判が結審〉参照〕。
そのようなところへ、2006年3月14日、史上初めて、ドライバーが「RS-2000」に勝つ判決が仙台高等裁判所秋田支部(畑中英明裁判長)で言い渡されたというニュースが飛び込んできた。
被告は、秋田県潟上市内の「RS-2000」(写真・礼田計撮影)により、法定最高速度60km/hを32km/h超過する92km/hで走行していたとして、検挙された。「そこにオービスが設置されていることは知っていたから、92km/hも出していない」と主張したものの、第1審・秋田簡易裁判所で罰金6万円の有罪判決が言い渡され、被告が控訴していた。
畑中裁判長は「検察官は『“RS-2000”はマイナス誤差しか生じない』と主張しているが、その客観的な裏づけはない(三菱電機がそう説明しているだけ)」とし、被告に公訴棄却の判決を言い渡した。「公訴棄却」とは「起訴自体が無効」という意味だ。
今回、「RS-2000」にプラス誤差が存在すれば、被告は30km/h未満の速度違反だった可能性があり、その場合、「交通反則告知書」いわゆる「青キップ」で処理される軽微な違反となる(ドライバーが反則金を納付すれば、それで刑事手続きは終わる)。ところが、被告は、「交通反則告知書」を交付されることもなく、いきなり起訴されており、刑事手続きが無視されているため、公訴棄却という理屈である。
もっとも、「RS-2000」の測定値という証拠の信用性が否定されたわけだから、実質的な無罪判決といえる。
筆者が被告とされている裁判でも、検察官(三菱電機)は「『RS-2000』はマイナス誤差しか生じない」と主張している。
しかし、大槻義彦早稲田大学名誉教授は「意見書」と証人尋問で、「とうていありえないこと。誤作動、誤測定があり、誤差は正規分布になる」と一蹴している。詳細は小谷洋之氏(ジャーナリスト)との共著『交通取り締まりのタブー!』(宝島社)をご覧いただきたい。
仙台高裁秋田支部判決について、大槻教授はこうコメントする。
「科学を否定するのは『オカルト』ですが、科学を過信するのは『逆オカルト』です。どちらも科学に対する無知や無理解から来ています。『逆オカルト』もいずれ馬脚をあらわすもので、本判決はその流れの1つです」
津谷裕貴(つや・ひろたか)弁護士(被告弁護人)と筆者とは、1991年、日本弁護士連合会が製造物責任訪欧調査団を派遣したときからのつき合いである(津谷弁護士は調査団メンバー、筆者は同行取材者)。
津谷弁護士は開口一番、「裁判官がよかった」と言った。その中身は次のようなことだ。
「証拠といっても、三菱電機作成の取扱説明書のたぐいばかり。『マイナス誤差しか生じない』という客観的な実験データもない。そういう証拠を1つ1つ吟味し、あたりまえの判決が出た。本来、あるべき姿の裁判官だが、あまりいない」
従前、オービスの信用性が争われた裁判では、「我が社の商品は優秀です」と宣伝するメーカーパンフレットやメーカー社員証言が証拠となり、有罪の山が築かれてきた。今後、そのようなずさんな証拠で有罪とされてきたドライバーたちが、再審請求や損害賠償請求を起こすことは間違いない。
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